「ダメな議論」の典型
裏紙: 「ダメな議論」のつづき。今回は応用をしてみる。
お題として、ある雑誌のコラム。
今の日本では子供を持つことは大変であることについて。
経済的な理由だけではなく、精神的な障壁もある。まだ自分が子供なのに、子供を育てる権利も自信も無い。いじめ問題や学級崩壊が話題になる学校も不安の種だ。子供を安心して預けられる場所なのかという疑問だってよくわかる。
日本という国の未来も不安だらけかもしれない。格差はますます厳しくなり、かつてのような経済成長は望めないのに、税負担と犯罪ばかり増えていく。環境問題もある。人が増えること自体が、地球への重荷になるのは、冷静に考えれば誰にでも分かることだ。子が親を殺す時代である。養育費を考えたら、老後の資金に回したほうが賢い選択かもしれない。ぼくは自分の意思で子供をもたない人たちのいうことが、すべてもっともな正論に思える。
この後、「それでも子どもをもつのはそんなに悪くないよ」という結論なのですが、以上の段落にはダメな議論のポイントがちりばめられています。
- 「格差はますます厳しくなり」
- 格差の定義がされてない
- ジニ係数は大して変わらない
- バブルの頃の方が保有資産格差は広いだろうに
- 「経済成長は望めない」
- そもそもバブルは経済成長ではない
- 経済成長が望めないのが前提になっているが根拠が無い
- 上場企業の最高益はノンコメント?
- 「犯罪ばかり増えている」
- 統計を見れば分かる。大して増えてない
- 特に少年凶悪犯罪は60年代がピーク
- 「環境について」
- これも定義されてない
- ダイオキシンのピークは70年代→良くなってるんじゃねぇ?
- 密閉された部屋でガス器具を使うと企業が訴えられる位過保護な国なのに?
- 人が増えることと環境への重荷について
- 冷静に考えれば誰にでも分かる?
→考えるのではなく調べて分かろうよ - 人口減の日本ならむしろ環境には追い風じゃない?
いずれも、調べれば分かるはずの事実が、調査をするこなく「前提」になっていたり「言われている」の一言で事実扱いになっている。その「言われている」という出所は、ワイドショーのコメンテーターであり、そのコメンテーターがこのコラムの著者だったりするので、循環参照しているだけ。
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