安心・安全のバズワードの下、国の安易な介入を許すな
日経8/26朝刊経済教室より、福井秀夫教授論文。
ポイント
- 安全・安心の美名の下、既得権擁護の動き
- 政府介入、市場の失敗対策を踏み越えるな
- 憲法が保障する伸びやかな社会体制守れ
日雇い派遣を禁止すべきだという政策論議がある。危険業務委依る事故が多い、ワーキングプアの原因になっているなどの理由からだ。雇用者による処遇などの説明が十分でないなら情報の非対称性をただすことは重要だが、日雇いの派遣形態を一律に禁じるのは労働者の選択を狭めることになる。2007年の厚生労働省調査では、現状のままでよいとする日雇い派遣労働者は45.7%と、正社員になりたいとする29.6%を大きく上回っている。そもそも日雇い派遣禁止で直接雇用や正規雇用が増えるわけではない。
そのとおり。こんな簡単な議論がスルーされている。まじめに議論しようとすると、「経営側の理論」としてシャットアウトされちゃう。経営者をいじめれば、労働者が浮かばれるという発想がそもそも生産的ではない。
事故の増大、賃金低下を理由に、国土交通省はタクシーの増車・参入規制を強化しようとしている。だが、需給調整規制が廃止された02年以降、それまで急上昇してきたタクシーの事故率、急低下してきた運転手の賃金は、変化率が鈍化し横ばいとなっているという事実を踏まえるべきだ。規制の強化は既参入者には好都合だが、新たに職を得ようとする人々の参入を妨害し、労働者間の格差をますます拡大させる。
労働者の賃金を語るさいには、一人あたりの賃金が語られがちすが、失業者が減っているのならその時点では歓迎すべきこと。賃金格差以前に、「働く場」があることが大事。
コンビニの深夜営業を「自粛要請」んどで制限しようという自治体や首長が存在する。環境負荷の低減に加え、「人は夜、就寝すべきだ」というライフスタイルを指導するためだという。
(中略)
制限は深夜営業しない小売店には朗報だが、消費者や勤勉なコンビニ経営者に対する根拠のない狙い撃ちとなる。小さな子供に親が説く道徳ならいざ知らず、権力機構が「夜は就寝すべきだ」などと、全市民に訓戒を垂れるのもおかしい。価値規範を押しつけることは、思想・両親の自由、営業の自由、個人の幸福追求権などの憲法的価値の破壊行為そのものである。
訓戒はロジックとしては破綻している。やっぱり、地元の小売店舗の保護というのが本当の目的でしょう。
ゴミ出しマナーが悪いなどの理由で、ワンルームマンション建設を禁じる条例を作る自治体が増えている。しかし、生活マナーの問題はそれ自体のルール化や民事の不法行為法で処理すべきもので、建築行為を制限する理由にならない。こうした規制は、憲法上の財産権を侵害するし、ひいては居住移転の自由を制限する。単身者には多くの弱者が含まれるが、既得権への配慮で単身者向け住宅を阻むことは格差の助長行為である。
「ネットカフェ難民」がまことしやかに語れており、彼らに対する援助も検討されているようですが、カネがあったとしても住む場所がない。条例で追い出されてしまっている。「上京する若者」は、選挙権そのものがなかったり、あったとしてもその自治体の選挙権ではなかったりする。
厚労省が薬の販売について、法の明文にもない「対面販売の原則」を省令で定め、薬局による薬のインターネット販売を原則として禁止しようとしている。
もともと、薬剤師が医薬品の副作用を購入者に説明しなければならないとする同省の理屈は建前に過ぎなかった。薬剤師が一切関わらない置き薬では、副作用の弊害の報告などはない。こうした事実を踏まえ、薬剤師がいないと薬が売れないという制限は、薬剤師の既得権を守るだけだという声が高まり、コンビニなどで一定の薬を販売できるようにする法改正が06年になされたのである。
この際、薬局によるネット販売までついでに禁じてしまおうなどとする試みは、既得権を持つ販売者や薬剤師などの巻き返しによるものだ。これは零細なものを含む進取の気性を持つ薬局、薬剤師イジメに他ならず、何より不都合も事故もなく薬をネットで購入してきた消費者の利便性に対する重大な挑戦である。
安心・安全というバズワードの下で、実態は「優秀なサプライヤーと消費者との出会い」を妨げるということが行われている。「いい人を国が選ぶから恋愛結婚禁止」という条例や省令があちらこちらで発令されている。
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