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日本電産の新興国戦略

日経12/28朝刊9面「経営の視点」より日本電産が電気自動車分野に力を入れているという記事。

バッテリーやモーターを調達すれば10人程度で組み立てられる電気自動車。中国には既に200社以上が乱立、米投資家のウォーレン・バフェット氏は現地電池大手のBYDに出資した。販売現場を目の当たりにした永守社長はこう読む。「中国では1回の充電で50キロ走行できる邦貨換算20万円前後のタイプから市場が爆発的に伸びる。10年後に世界でも電気自動車比率が3割に達する」

電気自動車市場の立ち上がりは永守社長の当初の見立てより10年遅れたものの、足元では関連モーターへの引き合い件数が前年の約30倍に達している。

日本や米国でも電気自動車の開発が進んでいますが、いずれもガソリン自動車の性能や用途を意識しすぎて、高価な電気自動車ばかりのラインナップです。部品点数の少なさや組み立ての容易さを考えると、本来は電気自動車という存在はリーズナブルであるはず。

法律上の安全基準を含めて車に本当に必要な性能を考えれば、電気自動車市場というのは自動車市場を置き換えるものではなく、電気自動車市場そのものが新しく作られてもいい。

インドのナノを「チープな自動車」としてあざ笑うことは、自動車先進国の論評としては上から目線で気分がいいでしょうが、市場に必要なものを価格含めてゼロベースでデザインした結果がナノという答えなのであれば、それが正解。

日本では電動アシスト自転車というものがあります。普通の自転車では中国製が多いのに、電動アシスト自転車には中国製がない。なぜか。それは中国では電動アシストなんてまどろっこしいことを言ってないで、100%の動力を電気で動かしてもアリだから。だから中国は電動バイクの先進国になっている。一方で日本ではなんとかして「自転車」の規制の枠組みでやりくりしようとしている。

ホンダのスーパーカブの設計思想は、「舗装のない道路でも走れる大きな車輪、片手で荷物を持てるようにクラッチを排除」と、インフラやルールをあてにしてないい設計ですが、だからこそ世界で売れた。

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空港周辺に医療拠点

日経12/28朝刊経済面より、産業革新機構が国際空港の周辺に高度な医療拠点を集積させる事業に投資する検討に入ったという記事。

羽田空港周辺と関西国際空港に接続しやすい神戸市への投資を想定しているとのこと。2010年中に集積事業を開始する。

産業革新機構というのは先端技術や特許の事業化んどを支援する官民ファンド。官民とはいうものの大半の出資本が政府。銀行から借金をしても政府保証がつくので、事実上は国の組織。

すでに創薬ベンチャーへの支援などに力を入れているようですが、そもそも規制の多い日本では医療系の事業育成は向いていない。おそらく本気じゃないでしょう。

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目を世界に転じれば暗さより明るさが目立つ

日経12/29朝刊、大機小機より、米国発の不景気だって日本は言っているけど、未だにまごついているのは日本くらいだぜという記事。

米大手金融機関はわずか1年で公的資金を返済した。迅速な利下げによって長短金利差を3%超に広げ、利ざやの拡大を通じてまず金融機能を取り戻した。

公的資金の返済というのはこれですね。

米大手銀シティグループは14日、米政府から受け入れた公的資金450億ドル(約4兆円)の返済計画を発表した。普通株の発行などで政府保有の優先株200億ドル(約1兆7800億円)を消却。残る普通株は政府が市場で売却する。不良資産に対する政府保証も打ち切る。米金融大手ではバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が9日に公的資金を返済。ウェルズ・ファーゴも返済交渉を進めており、近くすべての金融大手が返済を終える可能性が高い。

日本のバブル後に比べると資本市場の層が厚い。

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アスリートの価値

日経12/29朝刊スポーツ面、伊集院静氏のコラムより。

一年間、コラム連載を引き受けてみて、さまざまな読者から手紙、声をかけてもらい、経済紙のスポーツ欄を読む人が多いのに驚いた。起業家はスポーツが好きなのか。それなら社会人野球をはじめ企業の運動部の廃止、休止をできるだけやめてもらいたいものだ。

どうも伊住院静は日経新聞というものは、大企業の社長クラスだけが読んでいると思っているらしい。キオスクで売っている日経はなんなのか。

伊集院静にマジレスしてみる。

  • スポーツ欄をにぎわしているのはプロスポーツ。したがって企業運動部へのアテンションはやはりない
  • 仮に企業運動部がプロモーションとしての価値があったとしても、同様にプロモーションの価値として発揮できてるマス広告の予算は減ってる

ちなみに私も日経のスポーツ欄は大好きです。一読者として日経のスポーツ欄を読む意義はこんなところ。

  • 一ファンとして
  • 戦略の参考に
  • ひたすら観客動員数の遷移をながめて、チームの強さとビジネス規模との相関をウォッチ

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サイゼリヤの科学

日経2009/12/28朝刊「経営の視点」より、サイゼリアのコスト削減への取り組みについて。

  • 都心店舗の時給は1200円前後でファミレスとしては最高水準
  • 一方で利益は2009年8月期で営業利益率10%強とファミレス界ではダントツ
  • 掃除には掃除機ではなくモップを使う
    • 掃除機の空気を吸うという機能はいらない
    • 吸い取り口が掃除機では狭いため、30cmのモップと同等の歩数
    • モップの幅を120cmにすることで一拭きで済むため掃除機に比べて生産性は2倍
  • 期間限定の割引はしない
    • 急激な客数増で店舗作業を乱れることを避けるため
    • それでも11月の既存店の売り上げは前年比13%増
  • 皿洗いでさえなくせないか考える
    • なぜ油はさらにつくのか
    • さらの素材から工夫できないか
  • 安易に新技術に飛びつくこともしない
    • LED照明もそう
    • 「電灯を替える前にやるべきことは山ほどある」(堀埜社長)
  • 調理場近くに吸排気口を配置
    • 安全基準に照らし、本当に必要な酸素量を計算
    • 無駄な暖気がなくなれば冷房費が浮く

なまじっか料理人が集まるとこういう疑いはでないでしょう。

「エコ」という言葉に踊らされて、LEDにするのも企画書ウケやプレスウケを狙った施策。今の段階なら蛍光灯をリプレースするだけの効果がない。

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PACS(パックス)によるフランスの出生率回復

日経2009/12/20朝刊より、フランスで出生率が回復しているという記事。

ポイントはフランスのPACSという制度。

PACSとは連携市民協約と訳される。法的に婚姻関係を結ばなくてもカップルは税制や社会保障で結婚と同じような権利が得られる。生まれた子供の相続も認められる。1999年に導入。

2008年中にフランスで正式に結婚したカップルは約27万組。PACSは約14万組に上る。2008年に生まれた私生児のうち、婚外子の割合は過半数の52%に上る。

1993年にはフランスの合計特殊出生率は1.65だったが、2008年には2.02に上昇。

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コメでバイオエタノール

世界のバイオエタノールブームからすっかり出遅れた日本ですが、「これだけコメが余っているんだからコメでエタノールを作ればいいじゃない」という素直な企画を実行している人がいます。日経11/26朝刊より。

新潟県に7月、コメを精製したバイオエタノールをガソリンに混ぜた「グリーンガソリン」が登場した。原料はコシヒカリに比べ収量が1.5倍の多収穫米。昨年から361戸の農家が休耕地などで栽培を始め、約2300トンを確保した。

このコメを全農が買いとってバイオエタノールを作り、国の基準上限である3%のバイオガソリンを年間3万3000キロリットルを製造。県内19の直営スタンドで販売する。

コメ1トンから445リットルのエタノールが取れ、生産性はトウモロコシともそん色ない。

コメからお酒を作るというのは極めて素直。容量当たりのエタノール生産性がトウモロコシとそん色ないという点で、先行しているバイオエタノール群とも原理的には追いつくことができる。ただ、「お金」という点ではどうか。

課題は採算だ。国は製造所の建設費の14億円のうち半分を補助、11年度まで年3~4億の経費を負担するが、「補助金なしに事業を続けるのは容易ではない」と所長の石山氏。コメの買い取り価格も1キロ20円とコシヒカリの10分の1以下だ。国や県から10アール当たり最大計5万2000円の補助金があっても農家は赤字と言う。

全然ダメ吉。純粋にエネルギー源としてとらえた時には、コメはあと10倍生産性を高めないといけない。いや食料としてみたばあいでも、コメの輸入関税は700%という時もあったので、いずれにしてもコメはあと1桁安くつくらないと合格ラインを超えない。

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